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就農希望者のぶち当たる壁
「コックさんが自分で作った米や野菜で料理する自然派レストランを抱えている農業法人や、ソーセージやチーズといった加工品で有名だったり、観光農園で成功している農業法人もある。
取材するとよく”田舎者の人材はいらない”と冗談ぽく言われます。消費者の大半は都会生活者だから、都会に受けるセンスを持った人材が欲しいという意味です。求められてるのは単なる農業従事者だけではない」(前出・ライター)
農業法人とはいえ、そういった専門部門の専従になれば普通の会社に就職するのと何ら変わりはない。松尾さんが不思議に思ったことがある。採用の際に農業経験の有無を聞かれなかったのだ。
「後で理由が分かりました。経験が有ってもやめる人はやめるし、続ける人は続ける。それよりも仕事に取り組むやる気、人間性、特技や能力が重視される」

憧れだった畑仕事に汗を流し、前職で鍛えた営業力も評価され、松尾さんは充実した日々を送っている。だが希望だった独立は、今は棚上げ。
「今の会社(農業法人)にいて出世を目指すのもいいかなと考えている」
そう思うあたりも農業法人が都会のサラリーマンにとってなじみやすい理由だろう。
独立して自営の耕作地を持つ場合はどうなるか。全国新規就農センターのアンケートによると、就農する際に新規参入者が用意した資金は平均で1200万円。
生活が安定するまでに3〜5年を要したと約8割が答えている。前出のフリーライターは就農に”失敗”した人を取材している。
「農作物ですから収穫まで当初の数ヶ月間は収入ゼロ。貯金で生活を賄わなければなりません。単位面積当たりの収量、付けられる価格も経験を積んだ専業農家に比べると低く生活は苦しい。私が取材した元会社員の方は大型農機の購入を”予想外の出費”と失敗の理由に挙げました。
収益を上げるには機械化しなければならず、収入が少ない上に農機のローン返済を抱えて行き詰まった。アンケートにある3年や5年で生活が安定したという答えはかなりの成功例でしょう」
肥料、農薬、高額な農機のローン返済、その他諸々。土に接して生きるシンプルライフを夢見ても農業にもカネが掛かるのだ。
農業法人にしても「仕事が辛い」と逃げだす都会人は後を絶たないという。「夢」を持って望み「現実」にぶち当たるのが就農ブームの現実のようだ。
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